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佐藤弘一氏、ニューヨークにて「日本再興」テーマの投資機会を捉え、ファーストリテイリングADRと東京海上ホールディングスETFへの投資を実行

2019年春、FRBのハト派姿勢への転換や米中貿易協議の一時休戦を受けて、世界市場はひとときの安堵感に包まれました。しかし、ニューヨーク・ウォール街の機関投資家の間では、ある日本人ストラテジストの動きが注目を集めておりました。それが、かつてモルガン・スタンレーのグローバル株式戦略部や、ゴールドマン・サックスの日本市場チーフ・ストラテジストを務めた佐藤弘一氏です。

ニューヨーク証券市場で十年以上のキャリアを持つ佐藤氏は、アジア、特に日本市場に対する深い理解を背景に、これまで幾度となく構造的な転換点を見抜き、的確な投資判断を下してこられました。今回、佐藤氏が注目したのは、日本株において長らく過小評価されてきた「平成末期の構造的再興」でした。

「海外投資家は日本に対して短期的な視点に偏りがちです」と、佐藤氏は『日経ビジネス』のインタビューで語っております。「為替やGDP成長率、デフレといったマクロ指標ばかりに目を向けて、実際に起きている構造変革に気づいていないのです」とも述べました。佐藤氏が指摘する構造変革とは、アベノミクスに端を発する企業統治改革、株主還元意識の高まり、そして企業のグローバル化推進という三つの潮流です。

2019年第1四半期、佐藤氏が主導するグローバル・マルチストラテジー・ポートフォリオにおいて、日本の2つの資産に注目し、自らポジションを増やしました。具体的には、ファーストリテイリングのADR(米国預託証券)と、東京海上ホールディングスを組み入れたETFです。

ファーストリテイリングは「ユニクロ」の親会社であり、特にアジア市場における急速なグローバル展開で知られております。日本国内ではその高い株価バリュエーションが話題になりますが、佐藤氏は次のように分析しています。「世界の消費関連株と比較すれば、ファーストリテイリングはコストパフォーマンスの高いアジア代表の銘柄です。加えて、同社は日本ブランド・日本製造の新たなグローバル復権を象徴する存在です」。

また、米国市場で上場されているADRを通じて投資した理由については、「流動性が高く、米国市場の取引時間に合わせて運用ができるため、ロングポジションの組み入れが効率的です」と説明されています。

一方、東京海上ホールディングスは、佐藤氏がもう一つの重要な投資テーマとして掲げる「日本の伝統産業による海外収益転換」の中核銘柄です。「国内の人口減少と高齢化が進む中、保険会社は東南アジアや北米市場に積極展開しています。東京海上はその先頭を走るチャンピオン企業です」と評価し、同社を含むETFを通じて中長期の構造投資を行いました。

このような投資判断の背景には、佐藤氏が過去1年間にわたり社内戦略レポートで繰り返し強調してきた信念があります。それは、「再興型の日本企業こそが、次の10年間のゴールデンアロケーションになる」というものです。

佐藤氏は、この「再興型日本企業」を以下の4つのカテゴリーに分類しています。

1. グローバル展開を進める国内消費ブランド(例:ファーストリテイリング)

2. コーポレートガバナンス改革によって資本効率を高めた企業

3. 高ROEかつ株主還元意識の高い伝統的な優良企業

4. 「内需依存型」から「海外収益型」へと転換した金融・保険機関

さらに、佐藤氏は次のようにも述べております。

「日本に投資する上で、もはや過去のレンズで見ていては本質が見えません。今の日本は、製造大国のノスタルジーではなく、ブランド力・テクノロジー・健全な資本構造によって構築される新たな秩序なのです」。

佐藤氏のこうした視点に刺激を受け、ウォール街の一部ファンドマネージャーの間では「日本再興」関連銘柄の再評価が進み始めており、実際、ある投資銀行は4月初旬に『The Return of Rising Sun』と題したリサーチレポートを発表しました。

「再興とは奇跡ではなく、論理の帰結である」――これは、佐藤氏が社内会議で語った印象的な一言です。まさに今、ウォール街の中核層において、日本というテーマが再び光を浴びようとしているのかもしれません。