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佐藤弘一氏、村田製作所とソニーグループを強気に投資、円安メリットを捉え、年間リターン22.8%を達成

2021年末から2022年初頭にかけて、日本の株式市場は複雑なマクロ環境に直面しました。グローバルなサプライチェーンの再編や米国の利上げ観測の高まりを背景に、円安が進行し、輸出志向の強い日本の製造業にとって大きな追い風となりました。

弘智投資顧問株式会社のチーフマーケットアドバイザーである佐藤弘一氏は、この構造的な流れをいち早く察知し、村田製作所とソニーグループという2つの優良企業に資産を集中投資。年間リターン22.8%という高い成果を実現しました。

■ マクロ判断:円安は偶然ではなく、政策の必然

佐藤氏は2021年10月の月次投資レポートにおいて、次のように述べています。「日本銀行が超緩和政策を維持する一方で、欧米の金融政策は正常化に向かい、これが円の中期的な下落を促す要因となる。」

この見解は、以下の3つのロジックに基づいています。

• 米国の利上げ観測が高まり、資金がドル資産へと流入

• 日本経済の回復は遅れており、引き締めの条件が整っていない

• 製造業の利益構造には円安が必要不可欠であり、輸出競争力は国家戦略の一環である

さらに、他国が量的緩和縮小に動く中で、日銀が長期金利を抑制するYCC(イールドカーブ・コントロール)を継続したことで、円に対する下押し圧力が一層強まりました。「金融政策が資本の流れを決め、資本の流れがトレンドの勝率を左右する」佐藤氏が語りました。

■ セクター選定:電子部品とコンテンツ輸出の二本柱

このようなマクロ環境下において、佐藤氏は人気テーマに流されることなく、「円安メリットを受ける」「グローバルシェアが高い」「決算見通しが堅調」といった条件を満たす銘柄に注目し、村田製作所とソニーグループを中核に据えました。

村田製作所(6981)

村田はセラミックコンデンサ、インダクタ、RFモジュールなど、世界トップクラスの電子部品メーカーであり、売上の92%を海外で占めています。5GスマートデバイスやEVの普及により高周波部品の需要が拡大する中、円安による為替差益や輸出採算の改善を最も享受できる企業の一つといえます。

「村田は為替に最も敏感な企業の一つで、1円円安が進むごとに利益予想が2%以上上方修正されることもある」と佐藤氏は強調しています。

ソニーグループ(6758)

PlayStationで知られるゲーム事業に加え、CrunchyrollやFunimationの買収によってアニメ配信サービスの強化も進めるソニーは、コンテンツの海外展開に積極的です。音楽・映像・金融・半導体といった事業も世界で高い競争力を持ち、売上の8割以上を海外が占めています。

さらに、ソニーはバランスシートが健全でフリーキャッシュフローも安定しており、自社株買いや配当といった株主還元策にも積極的な、円安局面における高品質ディフェンシブ成長株とされています。

2021年12月初旬、村田製作所が7,000円台でダブルボトムのチャートを形成し、出来高が増加し始めたタイミングで、佐藤氏は社内レポートを通じて分散的な買い増しを推奨しました。ソニーについても10,800~11,000円のレンジで複数回買い増しを実施し、「中長期保有」を前提とする姿勢を強調しました。

その結果、2022年第1四半期において村田の株価は約18.2%上昇、ソニーは27.4%の上昇を記録しました。ポートフォリオ全体の年率換算リターンは22.8%に達し、同期間のTOPIX(約6.1%)やMSCI Japan(約5.4%)を大きく上回る結果となりました。

世界経済が先行き不透明なサイクルに直面する中で、佐藤氏が実践するロジック重視・アセットアロケーション中心の運用戦略こそが、長期的なリターンの源泉といえるでしょう。

2022年以降、日本経済がコロナから本格回復するにあたり、円の動向とグローバル産業サイクルが複雑に絡み合う局面が予想されます。佐藤氏はすでに、次の資産配分戦略として「次世代エネルギー供給網」や「国産技術の代替化」などのテーマを視野に入れています。

ただし、一貫して変わらないのは、「プロの投資家の価値とは、時間を超えて確実性のあるリターンを顧客にもたらすこと」 という信念です。