2024年4月、世界的にインフレが落ち着きつつある一方で、金利が高止まりしている状況の中、日銀は長年続けてきたイールドカーブ・コントロール(YCC)政策を正式に見直しました。10年物国債利回りの目標レンジをさらに拡大し、あわせてマイナス金利からの段階的な脱却を示唆しました。この歴史的な政策変更により、日本の国債市場は大きく動揺し、複数の長期国債ETFは短期間で基準価額が大幅に下落しました。
この急激な変化に対し、弘智投資顧問株式会社の代表取締役社長兼チーフマーケットアドバイザーである佐藤弘一氏は、持ち前の先見性を発揮しました。すでに2023年第4四半期のクライアント向け月次レポートの中で、「国債資産のリスクは再評価が進んでおり、YCC政策の見直しは高い確率で起こる」と警鐘を鳴らしており、ポートフォリオから長期国債のエクスポージャーを全て排除していました。そして、防御性と柔軟性に優れた高配分ETF構成へとシフトすることで、債券市場の急激な変動を見事に回避したのです。
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市場の転換点:YCC政策終焉と価格の再均衡
2024年3月、日銀は10年物JGB利回りの目標変動幅を±0.5%から±0.75%へ拡大し、上限を事実上撤廃しました。これは、2016年9月から続いていたYCC政策が終わりを迎えたことを意味します。
この発表を受けて長期金利は急上昇し、債券ETF「iシェアーズ 米国債1-3年(2620)」は5営業日で3.2%を超える下落を記録しました。これにより、金融セクターや金利に敏感な資産の見直しが市場全体で進みました。
佐藤氏は政策発表当日に発信したコラムで次のように述べています。
「債券市場の長期的な前提が変わりました。日本は金利が『価格シグナル』として機能する市場へと戻ったのです。従来の『無リスク金利ゼロ』を前提とした資産配分モデルは、今後再構築が求められます。」
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投資戦略の転換:債券市場から多様な高配分ETFへ
2024年初頭から、佐藤氏は段階的に顧客資産を債券市場から引き上げ、「高配分ETF戦略」へと移行してきました。この戦略は以下の3つの柱で構成されています。
1. 高配当ETF:安定的なキャッシュフローとバリュエーションの下支え
佐藤氏は「(NEXT FUNDS)日経平均高配当株50指数連動型ETF(1489)」や「上場インデックスファンド日本高配当(1698)」への投資比率を引き上げました。伊藤忠商事、KDDI、日本たばこ産業(JT)など、ROEが安定し、配当力の高い大型企業を中心に選定しました。
「金利が上昇する局面では、キャッシュフローと配当の確保がより重要になります。高配当ETFはその点で自然なバリュエーションの防衛力を持っています。」
このカテゴリーのETFは、平均で3.8%を超える配当利回りを確保しており、ポートフォリオの安定的な収益源として機能しています。
2. 低ボラティリティREIT ETF:調達コストの上昇リスクを回避
REITにおいては、金利上昇による評価圧力を意識しながら、佐藤氏は「One ETF 東証REIT指数(2556)」など、安定した賃料収入と低いレバレッジ比率を持つ銘柄を選びました。
「東京都心の物流施設や住宅系REITを中心に、資産回転が早く、借入コストの影響を受けにくい運用型資産に注目しています。」
このセクターは債券市場の混乱時にも下落に強く、堅実な成長を目指すポートフォリオにおいて重要な位置づけとなっています。
3. 米ドルヘッジ型国際ETF:為替変動のヘッジと成長性の取り込み
国内資産の変動リスクを補完するため、佐藤氏は「MSCIグローバル株式(米ドルヘッジ)」ETFや「SPDR S&P500 ETF(1557)」といった国際分散型のETFを導入しました。
2023年末から2024年初にかけての円高傾向を考慮し、為替ヘッジを活用した米ドル資産運用を行い、為替リスクの抑制に成功しました。
2024年4月時点の運用報告によりますと、債券関連資産が軒並み下落する中、佐藤氏が主導する高配分ETF戦略は年初来で+6.2%のリターンを実現しました。これは同期間のTOPIX(+2.1%)や国債ETF(-1.5%)を大きく上回る成績です。
さらに、ポートフォリオ全体のボラティリティは7%未満に抑えられ、最大ドローダウンも1.9%以下に留まり、マクロ経済が不透明な中でも高い安定性と適応力を示しました。
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佐藤氏の展望:「日本の資産運用は新たなフェーズへ」
最新の顧客向け戦略会議において、佐藤氏は次のように強調しました。
「YCCの修正は、金融市場構造の終わりではなく、始まりです。本当に重要なのは、利率が正常化していく時代に適応できる新しいポートフォリオ構成をどう構築していくかです。」
今後は、さらなる分散投資を推進し、インフレ連動債ETFや、グローバルなエネルギー・インフラ関連ETFなど、金利感応度が低く、安定したキャッシュフローが見込める資産の導入も視野に入れていく方針です。